研究内容

川口先生

我々は、界面や表面および形状を制御・利用した機能性高分子について研究を行っています。教育・研究スタイルは、自ら新しい高分子を設計・合成し、精密な特性解析や物性評価までを行うことを基本としています。したがって研究室では、合成化学から特性評価(物理化学)を行うための様々な設備が充実しています。
現在、大きく分けて以下に示す3つの研究テーマが行われています。

1.不均一系重合を利用した新奇な高分子微粒子合成水を媒体(溶媒)に用いた環境にやさしい重合法(ミセル(共)重合、乳化重合、分散重合、ミニエマルジョン重合等)に関する一連の研究を行っています。この重合法は工業的に最も使用されている重合法の1つであり、ナノサイズに分散(画分化)した微粒子(高分子ミクロスフェアという)が分散状態で得られます。高分子微粒子は低環境負荷の塗料、接着剤、色材、コピー用トナー、液晶スペーサー、電子材料および化粧品、クロマト用充填剤、医療診断薬、除放性カプセル、添加剤など様々な工業分野で広く活用されています。
現在、水系不均一重合におけるリビングラジカル重合に展開を図っており、これまで合成が困難だった各種ブロック共重合体や星型高分子からなる新奇な高性能複合微粒子の精密合成の開発を行っています。

2. 有機-無機ハイブリッド化による有機光学材料の屈折率制御
一般に、屈折率の異なる物質を混ぜると不透明になります。しかし、直径3nmのナノZrO2微粒子を高分子中にナノ分散させることができれば、高透明で高屈折率な光学材料が得られることを研究室独自の技術で見だしました。この技術を用いれば、これまでにない高性能な光学材料が生まれ、各種ディスプレイ、光学フィルム、スマホートフォンなどのカメラの高性能化、LEDなどの省エネ化が達成できます。

3. 重合性 (反応性) の官能基を有する高分子(マクロモノマー)を利用した高分子設計と溶液物性
末端に重合成官能基を有するオリゴマーあるいはポリマーのことをマクロモノマーといいますが、この高分子をさらに単独あるいは共重合させると様々なグラフト高分子あるいは分岐高分子が得られます。その中でも単独重合して得られた高分岐高分子のことを分子ブラシと言います。研究室では、高分子の分岐の効果と高分子の形態学に関する高分子溶液論の研究を行っています。近年では、螺旋軸上に多くの二重結合を有するマルチビニルポリマーの重合による可溶性のラダーポリマーの精密合成についても研究を行っています。